『500円玉貯金』でレンタカー ~彼女はいつもサイドギア~

原付バイクが遠くに見えた。あのヘルメットはきっと彼女だろう。どうりで今日はぼくが指名されたわけだ。
ぼくの設計は、運転席の左下から棒の出たギア……昔からのタイプだ。免許を取ってまだ100日たっていない彼女は、
いつもぼくを指名してくれる。

『教習所の車と、同じ場所に同じものが配置されていないと、運転できません……』

と、なんともたよりない理由だけれど……。

ぼくを半日レンタルするための料金を、彼女は『500円玉貯金』でためていた。ちいさなガラスの瓶のふちまで
コインが重なると、ふたをしめた瓶ごとをポケットに入れて、彼女は原付バイクでぼくのお店までうれしそうに通うのだった。

『本物の道路で本当に運転をしておかないと、ペーパードライバーになってしまうもん……』

と、ぼくを発車させながら、彼女は恐る恐る左折で敷地から出た。右折で出たほうが近道なんだけれど、今日もまだ彼女の
運転技量では、左折じゃないと怖いみたいだ。っくりと左折した彼女のデニムのジャンパーのポケットで、
もうひとつの小さなガラスの瓶がゴロンと転がった気配がした。

これは……ぼくのガソリンを満タンにして、ぼくをお店に返すときに使う用の『500円玉貯金』だ。
心配しなくてもいいよ。ぼくは低燃費だから、今日のお出かけの場所なら、そんなに枚数は使わないさ。

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